「ねぇ、あなたはどこに向かって歩いているの?」
「僕が行きたい所だよ」

「それはどこにあるの?」
「この箱庭の果て、そう最果てにあるんだ」

「箱庭だなんて!バカみたい!最果てなんてあるものですか」
「まるで世界の全てを見てきたような口ぶりだね」

「この世界が箱庭だなんて!」
「ああ、君。羊の数を数えるだけじゃ、いい夢は見れないんだよ」


2014-10-17

書きチラシ

第二回文学フリマ大阪に「37+c」のチラシを持っていった。これといって告知する事もなかったのだが、何かを無料配布したいという欲求はなぜだか出店を決めた当初からあった。「37℃の揺らめき」というタイトルで掌編のような散文を書いて配布してみた。

A4の紙を折り畳んだだけでzineとはいえない、さらに写真やイラストもない、まさに「書きチラシ」。テキストを書いてイラレでレイアウトして一旦プリンターで出力。それをハサミでセンテンスごとに切って別の紙に糊で貼る。セロハンテープで固定する。1行カットして手書きで書き入れる。

で、それをダイソーの5円コピー機でコピーする。試し刷りはなんだか薄い・・・。濃度MAXに設定してもう1枚試し刷り。お、ちょっと陰影がついた。もうちょっと荒くても良かったな。当日足りなかったら嫌なので500円投入して100枚コピー。持ち帰ったらひたすら折る。




文学フリマ当日は「これ貰っていっていい?」って持ち帰ってくれる方がチラホラいて、アレ読んだ人どう思うのかなーと考えたりして楽しかった。まあ、でも、その、・・・ちょっと作り過ぎたかも。当日は結局10数枚持っていってもらえただけで、うーんな感じ。やっぱ手に取ってもらうと言う意味で、イラストや写真のビジュアルって必要なのかなぁ。来年への課題だなぁ。

それでも目にとめて興味を持ってくれて持ち帰ってくれた皆様には大変感謝です。80部ほど残っているので直接会える人にお渡しして読んでもらおうと思っています。


2014-09-17

第二回文学フリマ大阪に出店して

昨年の春、第16回文学フリマin大阪に来場者として訪れた。今年は出店者として参加。個人的な目的としては「作り手として自分を晒す」ということ。だから1冊も売れなくても構わないと思っていた。その割にはTriggerの「17+C」の在庫全部およそ80冊、文章zine「佐世保ノスタルジア」を20冊、前日に仕込んだ37+cの無料掌編チラシ100枚を携えてTriggerのメンバーでフォトグラファーの優子嬢と会場に向かった。

10時半頃に到着すると入口付近には多数の来場者が開場を待っており、会場内ではほとんどの出店者が既にそれぞれのブースを設営していた。我々のブースはステージ前のEブロック。暗幕をテーブルに敷いて本を並べ値札を置いて終了。優子嬢は024と合作をした写真とテキストのリーフレットを8部持ってきておりそれを100円で売ると言う。これで販売アイテムは3つ。それをサンプル置き場に提出し一息ついた。


実行委員長の挨拶に続いて傀儡舞が披露され開場時間の11時。一般客が入場。急に人の動きが感じられた。開始10分で佐世保ノスタルジアが1冊売れた。「僕、実家が平戸(佐世保の近所)なんです」そういって買っていってくれた。本当に嬉しかった。その後は夕方4時まで手に取って見てもらったり、そのまま買ってもらったり、無料のチラシを持って帰ってもらったりして、その度に優子嬢と二人で喜んだ。ちなみに優子嬢のリーフレットはあと1部で完売だった。


色々考えたし色々学んだ。自分の作品を目にしてもらうためにはまず手に取ってもらわなければならない。歩いている人たちをじっと見過ぎるのもよくない。適度に何かしているくらいがいい。値札だけじゃダメだ。出店者に聞かなくてもなんとなく分かる情報を示しておくべきだ。これは一段目の情報。興味を持ったら出店者に聞く。これで二段目の情報。ここからコミュニケーションが始まって、その作品を持って帰ってじっくり読みたいかが決まる。たぶんそんな感じだと思う。早い段階でそれに気付いて説明ポップを手書きで作って設置した。周りの出店者の方々のブースを見て、やはり色々工夫されているなと感じた。


どうすればもっと手に取って、更には購入してもらえるのか。もちろん本の内容にもよるし、価格の設定にもよるとも思う。本の装丁デザインやタイトルも何かしら購買への要素が含まれる。実際「佐世保」というワードに足を止めるお客さんも何人かいた。


帰りの電車で優子嬢と色々話をした。次回どうしようか?仲間のクリエイターにも声掛けよう!色々、色々話した。個人的には文章zineに何かしらの「ビジュアル」を放り込めたら面白いかもと考えている。そして自分は小説と詩の間にある「散文」というスタイルが割としっくり来るなと実感した。それとこのブログサイトはマメに更新しなきゃなと反省もした。


来年の第三回文学フリマ大阪が、とても楽しみだ。

2014-09-01

「第二回文学フリマ大阪」に出展します

文学フリマに関しては有名なので前々から知っていたが、自分がそこに出展するとは考えたこともなかった。「文学だと信じているもの」なら何でも出展してもいい(フロッピーディスクに収められたデータでもいいレベル)。それが文学フリマ。

文章は書ける、でも本は作れない。本なんてそう簡単に作れない。そう思っていた。でもTriggerのみんなで作ることが出来た。zineという手作り本の世界を知った。マチオモイ帖にソロで出展した。文章はどんな形でアウトプットしても面白いと知った。

本や文章を独自でアウトプット(パブリッシュ)している人はたくさんいる。そんな人たちが集まる文学フリマを今度知る。その後の自分はどうなるのだろう。帰りの電車の中で何を考えるのだろう。自分が変わる様を自分で感じるのは実に楽しいことだと思う。

それを求めるためにも「第二回文学フリマ大阪」に出展しようと決めたんだ。


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『第二回文学フリマ大阪』

■開催日:2014年9月14日(日)
■開催時間:11:00~16:00
■会場:堺市産業振興センター イベントホール
■アクセス:地下鉄御堂筋線「なかもず駅」、南海高野線「中百舌鳥駅」徒歩3分
      アクセスの詳細についてはこちらをご覧下さい
■入場料:一般来場者は入場無料です!

■主催:文学フリマ大阪事務局

文学フリマ公式サイト
当日はイベントホールのブース「E-47」におります。
Triggerの「17+C」を販売してます。(¥1000・税込)




2014-03-23

「しきい値」を下げた話

自分の中にある合格点の低さ、と言い換えてもいい。

頭の中にあって、それも具体的にあって、ああこれはアウトプットしようかなって考えるんだけど、でもなぁ・・・どうせやるんだったらちゃんとしないと格好つかないよなぁ・・・やったとして、これ見た人がどう思うかなぁ・・・って思ってしまう。もうちょっといい評価がもらえるようになってから出そう。で、やらない。そう考えてやってこなかった。

もう何年も前に近代美術の展覧会で衝撃的な作品を見た。鉛筆でサインされた古い木箱。それが厳重なガラスケースに入れられて展示されている。え、これ、作品か?でも有名な作品のようだった。価値があるらしい。世界的に評価されているようだ。作品の素晴らしさは全く理解出来なかったが、衝撃は受けた。

そして数年前。神戸のアートイベントで展示されていた作品にも同じような衝撃を受けた。1センチ位の大きさにカットされた木片。それが作品としてネームプレートを付けて展示されていた。作品名は「木片」。そのままやないか!やはり衝撃だった。

木箱にしても木片にしても、作り手にとっては最高の作品だったんだろう。何かイメージしていたものが完全に表現出来た。もう同じものは作れない。きっとやりきったのだろう。そして彼らは評価を一切気にしていない。自分の物差しで考えている。自分こそがが基準なのだ。評価はされた方がいい。でも「100%の評価」を求めていたらいつまでたってもアウトプットできない。だから「しきい値」を下げる。

まだ見ぬ評価のことは一旦忘れて自分がやりたいことをアウトプットしていこう。

そう、木箱と木片が教えてくれたのだった。

2014-02-27

文章zineにこだわってみた


マチオモイ帖に出展する「佐世保帖」が出来上がったのは締め切り日である2月14日だった。

個人の名前が入った本を作ったのは初めてで。A5サイズのzine(ジン)。束の端をホッチキスで留めて両面テープで表紙を付けた。その瞬間、紙の束はその存在を本に変えた。

やったーとか嬉しいーというより、「ほー」っと思った。安堵なのか分からないけど、単純に「ああ、本になったわ」と、当たり前の事を思った。この感覚はTriggerで蜆楽奇譚帖を作った時にも感じた。何度味わっても独特の「ほー」が出てくる。

この本を書く時に決めたのは、文章だけにしようということだった。文章家としての存在意義を一度出し切ってみようかと。だから文章とレイアウト以外の目で見て分かるイラストや写真は一切入れなかった。ただ、途中欲目は出た。1枚だけ紙焼きした写真を最後のページに貼ってみようかなとか思った。でもやっぱ違うよ、俺、写真家じゃないじゃない。イラストレーターでもないじゃない。文章家でしょ?じゃあ文章で押し切れよ。写真入れたいんだったら最初から写真家と組めよ。イラスト入れたいんだったらイラストレーターと組めよ。今回は文章本にするって決めたじゃないか。そんなことも考えたりして書いてた。

本という形にするのは久しぶりの事で、楽しい作業だった。印刷をお願いしたロコプリさんのご厚意でずいぶんいい紙を取り揃えてもらってびっくりするくらい上質な本になった。ロコプリさんの大将の「応援してやる!」っていうその気持ちがとても嬉しかった。またいろいろお願いしよう。

やはりzineは面白い。もうちょっと荒い感じの本とか作ってみたくなる。自由過ぎるアウトプットはいつだって面白い。



『my home town わたしのマチオモイ帖』

わたしのマチオモイ帖 公式サイト


【東京会場】
会期:2014年2月28日(金)~3月23日(日)
   11:00~19:00(会期中無休)
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ
   東京都港区赤坂9-7-1
   ミッドタウン・タワー5F
入場無料 


【大阪会場】

会期:2014年3月7日(金)~3月29日(土)
   平日:11:00〜21:00
   土日祝:11:00〜19:00(会期中無休)
会場:メビック扇町
   大阪市北区扇町2-1-7
   関テレ扇町スクエア3F
入場無料


「佐世保帖」という本で出展しています。会場で見かけましたらぜひ手に取ってご覧くださいませ。

2014-02-12

思い出を再構成した物語

マチオモイ帖の原稿を印刷に出した。明日には刷り上がってホッチキスと両面テープで自家製本をしていく。物語のような詩のような散文のようななんともはっきり分からない自由過ぎる文章を12編書いた。

いろいろ思い出して何かと何かを組み合わせて構成する。コラージュってこんな感じかな。例えばあの人の人格とこの人のエピソードを合わせて一つのキャラクターにしたり、印象的だったアイテムを関連の無い場所で使用させてみたり。結果、ノンフィクションのパーツを使った、「フィクション」が出来上がった。

きっと知らない人が読んだら体験談だと思うんだろうけど、全然違う。でも全てを説明する事が出来る。

このお話を作るにあたって色んな人を思い出した。お世話になった皆さんは当たり前なんだけど、それこそ一回しか喋った事のないような人を急に思い出したりした。記憶の引金ってあるんだなぁ。

書き上がった日に、大学の恩師から「元気にしてますか?」ってメールが来たのは驚いた。ただ、この本を先生に送るのはちょっと気が引ける。そんなナイーブなキャラじゃなかったじゃんって言われそうで。

2014-01-09

マチオモイ帖

大阪の「メビック扇町」と「東京ミッドタウン・デザインハブ」で開催される『マチオモイ帖』に出展することにした。2012年にはTriggerとして「蜆楽奇譚帖」という作品を発表している。2013年はパスした。テキストはほぼ出来ていたが「蜆楽奇譚帖」のとき以上の熱量が自分の中で感じられなかった。一石投じたいとかぶちかましたいとかのテンションではなく、前回もやったしじゃあ今回もというある種ルーティンに近い感じがどうしても拭えなかった。それを出したらTriggerはTriggerでなくなる。そう強く感じた結果、エントリーをキャンセルした。

それからの1年間。なぜか妙に自分の過去を誰かに話す機会が多かった。自分が大学生活を送った長崎県佐世保市。そこで見た風景、体験したこと、忘れられない味。喋っていくうちに色々思い出してきた。

懐かしくて「Googleストリートビュー」で街並や当時住んでいた辺りを見た。15年以上も前なので当たり前だがずいぶん変わっていた。JR佐世保駅周辺には大きな商業施設が出来て垢抜けた雰囲気になり、大学近辺の店や施設など当時のままのものも自分の記憶と違っていたりもした。もう自分の知っている街ではなかった。

今の自分が「想う」街は1999年の佐世保市だ。もう二度と行くことの出来ない「過去の街」を想う「マチオモイ帖」。Triggerではなく一個人として「佐世保帖」を出展する。あの頃の記憶の欠片を集めていく作業。そしてそれを自由に物語として再構成していく。