「ねぇ、あなたはどこに向かって歩いているの?」
「僕が行きたい所だよ」

「それはどこにあるの?」
「この箱庭の果て、そう最果てにあるんだ」

「箱庭だなんて!バカみたい!最果てなんてあるものですか」
「まるで世界の全てを見てきたような口ぶりだね」

「この世界が箱庭だなんて!」
「ああ、君。羊の数を数えるだけじゃ、いい夢は見れないんだよ」


2015-03-20

マチオモイ帖「佐世保帖」


時々、1999年頃を思い出していた。

長崎県、佐世保市にいたあの頃。

空気の質感、だんだん聞き慣れていくイントネーション、
埃っぽい学生アパートの部屋、海の見える小さな街、
愛想のいい人たち、少し緩めの感覚、モラトリアムの日々。

思い出すたびに、心の端っこが「キュッ」と摑まれる。

馬鹿みたいに仲間と笑い合った
日が沈んでもまだベンチで喋ってた
頭がおかしくなるほど将来を考えた
死はいつもすぐそばにある事を知った
誰かのアパートに集まっては朝まで酒を飲んだ
恋人が去った後の虚無感に包まれた
この日々がいつか終わる事実から目を背けた
取り憑かれたように駄文を書きまくった

あの街の中で
知らない間に大人に近づいた

あの街を離れて
いつの間にか大人になった

記憶は断片化されて、手のひらからこぼれ落ちて行く

この手に残った記憶の残骸は あまりに美しくて
この胸に抱いた記憶の残骸は あまりに愛おしくて

バラバラの断片を集めて
もう一度「再構成」してあげる

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

もう二度と訪れる事の出来ない
『1999年の佐世保』を想う

2014年に作ったマチオモイ帖
『佐世保帖』

今年開催されているマチオモイ帖にも出展しています。



入り口を入って左側、「九州エリア」の本棚内です。
どうぞ椅子に座ってゆっくり読んでみて下さい。

大阪エリア(壁側にある縦型の本棚)には
私が文章で参加しているアートユニットTrigger
『蜆楽奇譚帖(けんらくきたんちょう)』が置いてあります。



美しい絵と写真のコラボです。こちらもぜひ。


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私のマチオモイ帖「日本中がマチオモイ2015」

【展示日程】
2015年3月6日(金)〜29日(日)(会期中無休)
平日:11:00〜21:00 土日祝:11:00〜19:00

【会場】メビック扇町
大阪市北区扇町2-1-7 関テレ扇町スクエア3F
http://www.mebic.com/event/5026.html

【入場料】無料

→マチオモイ帖公式サイト
http://machiomoi.net/



2015-03-11

「歩いている」

私は森の中を歩いている。

緑の木々から差す木漏れ日を浴びて、ふと思う。

私はどこに進もうと思っていたのだろう。
これは果たして道なのだろうか。
なんとなくの方角は分かっている。
だけどそっちに向かうのが「正しい」のか、
それとも「間違っている」のか分からない。

私は浜辺を歩いている。

乾ききった流木を横目に波の音を聴き、ふと思う。

私はどこに進もうと思っていたのだろう。
どこまでも続く砂浜と先のイメージすら出来ない海に
終わりはあるのだろうか。
浜辺の砂の一粒と海中で波が作る泡粒に思いを寄せる。
彼らはどこに行くのだろう。

私はどこに行くのだろう。

どこかで鐘の音が聞こえる。
誰かが大きなバイクに乗っている。
足下を羽のない黄金虫と妖精の女の子が駆け抜けた。
私はポケットの中で冷えた鋼鉄の感触を確かめて空を見上げる。
どうやらスターシップは墜落したらしい。

私は立ち止まり、自分の歩いてきた道を思い返す。

どこかでパレードの音が聞こえている。
オレンジ色の猫が静かに笑って頷いた。

私は歩いている。